DeNAがまとめサイトを閉鎖するに至った経緯
まず、今回DeNAがキュレーションサイトを全て閉鎖することになった経緯をまとめておきましょう。
同社は12月7日に記者会見を開き、運営する10のまとめサイトの全ての記事を非公開にすることを発表したわけですが、そこに至る経緯を大雑把にまとめると次のようになります。
(なお、DeNA側はこのサイトを医療関係者の監修を受けずに運営していたが、断りとして「情報の利用について一切の責任は負わない」といった文言は当初から入れていた)
②また、SEOの専門家からも「『死にたい』というワードで検索1位に来るWELQの記事の内容が、読者の配慮に欠けているものである」「『死にたい』という語で検索に来る感傷的な人に対して、アフィリエイト広告に誘導して自社の収益につなげるのも問題である」と、道徳的にも問題があると指摘された。
③上記のように、医療的観点や道徳的側面から相次ぐ批判があったこともあり、「一体記事は誰がどのように作成しているのか」という点にスポットが当てられた。そして記事の作成に関して、DeNAが外部からライターを雇い、そのライターに元々あるサイトから記事をリライトするよう指導していたことも発覚。これが「著作権を侵害しているのではないか」という点も問題視された。
④これらの点から様々な個人や団体から批判を受けたことで、DeNAは運営している10個のキュレーションサイトのうち「WELQ(ウェルク)」をはじめとする9つのサイトについて「運営に問題があった」ことを認め、サイトの記事を非公開にした。
⑤さらにその後、キュレーションサイトの中で唯一運営体制が異なっているという理由から当初非公開にしていなかった女性向けサイト「MERY」も記事を大部分非公開にすることになり、結果としてDeNAが運営する10個すべてのキュレーションサイトが一旦閉鎖されることになった。
経緯を大きくまとめると以上のような感じです。
DeNAがまとめサイトの問題点は?
上記のまとめサイト問題を整理すると、次の点が問題と言えます。
②は道徳的問題
③は法的問題
もちろん、これらは一つ一つが連動して今回の問題に発展しているので、それぞれ別個独立の問題というわけではありませんが、あえてわかりやすく分けるとすればこのようなことが言えると思います。
特に今回の問題のきっかけとなった①は、「医療」という人体や命にかかわる記事だから問題視されたと言えるでしょう。SEO一位にくる記事の内容に一部不適切なものがあっても、医療や薬にまつわる内容でなければ、この①自体はそこまで大きな問題ではないのかもしれません。
そして今回の件で最も大きな注目度を集めたのが、③の著作権的な問題です。12月7日の記者会見でも「他の記事をリライトする」この著作権の観点が最も関心を集めており、サイトをすべて閉鎖した直接的な要因もこの③が占める割合が大きいはずです。
なお、この流れを受け、他の会社(リクルートやサイバーエージェント)もサイトの「医療」や「健康」に関する一部の記事を非公開にし、内容を再確認するという措置をとったようです。今回のDeNAの件は、他社にも影響をあたえるほど重要な事案だったと言えるでしょう。
まとめサイトをコピペしているYouTube動画
では、ここからはYouTube動画についてです。
現在YouTubeには、ネイバーまとめなどのキュレーションサイトの文章をそのままコピペし、それをスクロールさせた「文字のスクロール+BGM」の動画が結構あります。
これは「時間をかけて稼ぐより、楽して稼ごうぜ」ということを謳った情報商材の影響が大きいように思います。
まとめサイト自体の著作権についてはグレーなところではあるが問題視もされていなかったということもあり、それを元にして動画を作成すれば「コピペで手軽に稼げる上に、まとまった情報なので視聴者のニーズも強い動画ができる」ということで、このような動画を作成する人が多くなっているのでしょう。
しかし、情報として価値があったとしても、こういった動画が稼げなくなるのは正直時間の問題だと思います。
すでに述べたように、DeNAのキュレーションサイトは「コンテンツの質・道徳・法」という三つの側面が主な問題となっています。そしてその中でも、特に三つの目の「法的問題(著作権の問題)」がサイトすべてを閉鎖するに至った大きな要因となりますが、そういったまとめサイトをそのままコピペして稼ごうとする動画にも、著作権上全く同じ問題がつきまといます。
これまで著作権的にあまり問題視されてこなかったまとめサイトが今回、大手企業の名前と共に大きくメディアで取り上げられたことで、まとめサイトに関連するネット上のコンテンツの著作権を見る目もかなり厳しくなってくるはずです。
そうすると、そのような目がYouTube動画にも向けられるのはごくごく当然の事であり、いずれはそういったまとめサイトコピー動画もBANの対象になることは容易に予測できます。
もちろん、今回大きくメディアで取り上げられたのは「著作権上問題だから」以前に「一流と言われる大手企業だから」という部分が大きいのは事実です。一定の信頼と実績のある大企業だからこそ高い注目が集まったというのは否定できません。
そのような意味では、大手企業でもなんでもない、素性のしれない個人が、未だ無法地帯と化しているYouTubeにおいてやることなど、すぐさま規制がかけられることではないという見方も一部できます。
しかし、すぐに規制がかからないとしても、それは時間の問題になるだけで結果は変わりません。すぐにBANの対象になる可能性もなくはないですし、いずれ規制の対象になるとわかっているものに対して今から時間をかけるのはビジネス的にも愚の骨頂です(資産にならないものに時間をかけるのは論外です)
したがって今後は、YouTube上でもまとめサイトの文章をコピペしたり一部リライトして作成したような動画も、BANの対象になることは避けられないでしょう。
一方、まとめサイトの情報を参考にしながらも、自分で調べた内容を付加して一から自分で文章を構成したり、プレゼンという形で話したりする動画であれば全く問題なく、内容としてもニーズが強いものになるのではないかと思います。
「最初から楽して稼ごう」という言葉は、YouTubeでもそろそろ終わりになってくるかもしれません。