今回は「認知的不協和理論」という心理学用語を解説します。

この記事を読むことによって、
・「認知的不協和理論とは何か?」
・「日常のどのような場面で認知的不協和理論があわられるのか?」
・「ビジネスでは認知的不協和理論がどのように応用されるのか?」
ということが理解できるようになります。

意見すると難しい言葉ですが、この記事ではよく目にする日常の場面をあげたり、人気漫画を具体例に挙げながら解説しますので、ぜひ最後まで読んで内容を理解してほしいと思います。

それでは、まずは認知的不協和理論について簡潔にまとめた以下の動画をご覧下さい。


以下、これについて詳しく解説していきます。


認知的不協和理論とは?


認知的不協和理論”とは、人間の心理的行動の一連の流れを指すものです。

「自分のこれまでの信念や、それまで行動してきたことと矛盾する「新事実」を突きつけられると、それに対して不快感の抱き、そして不快を払拭するためにその矛盾を解消しようという行動に出る」

この一連の流れを認知的不協和理論と言います。そのメカニズムを簡潔にまとめると…

①《矛盾が生じる》
これまでの信念や行動と相反する事実が発覚する
    ↓
②《認知的不協和に陥る》
不快感を抱く、もやもやとした感覚を覚える
    ↓
③《行動を起こす》
不快感を取り除くために矛盾を解こうとする

この3ステップの流れで心や体が反応する、この一連の流れのことを認知的不協和理論というのです。


認知的不協和理論の具体例


ただ、これに関しては具体的な事例がないとなかなかイメージできない思うので、簡単な具体例を挙げて説明します。

では、まず「たばこを吸う人」を思い浮かべてみてください。



たばこを吸う人には「これまでたばこを吸ってきた」という行動があります。一方で「たばこは体に悪い」という事実もあります。当然、たばこを吸う人の多くは、それが人の体に害悪であるということもわかっています。

この場合「このたばこを吸う」という行為は「たばこは体に悪い」という事実とは、相反する位置にありますね。たばこが害悪であるという事実をもとに考えると、それを吸うという行為はいわば相容れない矛盾した行為となります。

そしてこの時、そのタバコを吸う人に対して「なぜ体に悪いのにたばこを吸っているの?」と尋ねたとします。これはいわば「なぜ矛盾した行動をとっているの?」という質問になります。「体に悪い」という事実を改めて提示し、その人の行動の矛盾をあえて言語化して示した質問になっています。

するとタバコを吸う人からは、実にいろいろな回答が返ってきます。その中の多くは、何かと理由をつけてたばこを吸うことの正当性を主張した回答です。「体に悪いと言われているけど実はボケ防止には効果的」とか「別にみんなやってるし」とか…。果てには「たばこ税払ってるから国に貢献してるし」などと、完全に論点をズラした主張をする人もいます。

この一連の流れが、認知的不協和理論の流れに沿っていることになります。

①《矛盾が生じる》
行為 =「自分はタバコを吸っている」
事実 =「タバコは体に悪い」
   ↓
②《不協和状態に陥る》
矛盾に対してもやもやとした感覚を覚える
   ↓
③《行動を起こす》
「タバコはボケ防止には良い」「みんな吸ってるから怖くないなどと、タバコを吸うことの意義を主張し、これまでの行動に無理矢理正当性を見出す(不協和状態を解消する)。

といった感じですね。メカニズムは「矛盾」→「心情」→「行動」の流れになります。

このように“認知的不協和”は、実は日常のいろんな場面で見ることができるのです。


あの人気漫画における認知的不協和理論の描写


この認知的不協和理論が日常のいろんな場面で見られる心理的行動であるということは、その人間の心理や行動をストーリーの中に反映した「漫画」などにも、その描写はいくつも見られます。

例えば『名探偵コナン』には、次のようなシーンがあります。


【認知的不協和シーン①】(28巻)

不老長寿の夢が叶うという伝説がある「人魚の島」に訪れたコナンと服部平次。その島で不可解な連続殺人事件が発生します。最終的に事件に関する証拠をつかんだコナンは、服部に対して電話口で「連続殺人の犯人は誰か」について自分の推理を話します。


コナン「服部…今からオレの推理を話す…聞いてくれ…」

服部 「え?何?」

(・・・推理を話す・・・)

服部 「アホ!!そんなわけあるかい!!! オレは信じひんぞ!!」

コナン「服部…不可能なものを除外していって残った物が…たとえどんなに信じられなくても…それが真相なんだ!!

服部 「なんやとォ!?」

ここで、服部平次は信じがたいコナンの推理を聞かされることになったわけです。「絶対に犯人ではないと思っていた君恵さんが実は犯人」というコナンの推理。突然の出来事に、服部はその事実を受け入れることができません。

電話を切った後も「ウソや!ウソや!そんなんウソや!!オレは信じひんぞ工藤!!」と、心の中で「あの人は犯人のはずがない」と言い聞かせる場面があります。

人は、信じていた事実とは異なる、新たな事実を告げられると、それを素直に受け入れることができないのです。これが認知的不協和な状態ということいなります。

そしてコミック29巻では、今度は逆にコナンがその心境に陥る場面があります。コナンと服部の立場が逆転し、服部がその言葉をコナンに投げかけるのです。


【認知的不協和シーン②】(29巻)

コナンの憧れのサッカー選手であるレイ・カーティスが出席するパーティーに参加したコナンと服部平次。そのパーティー中に突如殺人事件が発生します。そしてコナンともに現場周辺の状況を調べ上げた服部は、レイ・カーティスが犯人である可能性をコナンに告げるのです。


服部 「おい工藤…できるんとちゃうか?他の二人には無理やけど、あの人がいつも使てる物を利用したら、遠くから部屋の明かりを操作することが…」

コナン「ハハ…何言ってんだ…そんな物、あの人持ってなかったし…部屋にも…」

服部 「おまえこそ何ゆうてんねや?そんなんあの小っさい道具があったら何ぼでも隠せるんと…」

コナン「ふざけんな!!そんなわけ絶対ねぇ!!!それをオレが証明してやっから!待ってろ!!」

服部 「(工藤…おまえゆうてたやんけ…できひん物を除いていって残った物が…たとえどんだけ信じられへん事かて…それがホンマの事やって…そうゆうてたやないか…工藤…)」

このように、29巻ではコナンも同じような心理に陥ります。「レイ・カーティスが犯人なわけない」と自分に言い聞かせ、服部の推理を受け入れようとしないのです。まさに認知的不協和状態に陥っていますね。

29巻のコナンの場合に即して考えると、

【信 念】=レイ・カーティスは素晴らしい人物である
【新事実】=レイ・カーティスは殺人犯の可能性がある

この二つに矛盾が生じ、コナンの心に不快な気持ちが芽生えます。そしてその後、コナンは「レイの無実を証明しよう」と、その矛盾を解消しようという行動に出るのです(結果、レイ・カーティスが犯人であるという決定的な証拠が見つかり、コナンは止む無く「新事実」の方を受け入れることになります)

上のコナンや服部の場合は、結果的に「その人が犯人である」という新事実を受け入れます。

しかし多くの場合、人は新事実を受け入れられずに、これまでの「信念」が正しいんだと言い聞かせ、自分のこれまでの行為を無理やり正当化しようとします。その典型が、タバコを吸う人の多くにみられる行動ですね。


ビジネスにおける認知的不協和理論の応用


では、この認知的不協和がビジネスでどのように応用できるか、ということについて話をしましょう。

認知的不協和理論のビジネスでの応用法を思い切って単純化すると、

●購入前に顧客に違和感を与える【パターン①】
●購入後に顧客に安心感を与える【パターン②】

という二つのマーケティング手法に分けられます。

■【パターン①】購入前に違和感を与える


まず、ビジネスである以上、顧客・読者に何らかの行動を起こしてもらわなければなりません。「購入」という行動だったり、「資料請求」という行動だったり、とりあえず何かの行動を起こしてもらわなければ、ビジネスは成立しません。

そこで、「顧客や読者はどんな時に行動を起こすのか?」を考えることが重要になるわけですが、それに対する一つの答えがすでに上に書いてありますね。

上の①「矛盾」→②「心情」→③「行動」の流れを見ると、③の「行動」を起こしてもらうための一つの手段として、②の「不協和という心情」を抱いてもらえばいいことがわかります。そして②の「不協和という心情」を抱いてもらうためには、①の「矛盾」を発生させることが必要なこともわかると思います。

つまり、顧客に対して何らかの矛盾を提示することができれば、顧客が行動を起こしてくれる可能性は高くなるわけです。

では、顧客に対してどんな矛盾を提示すればいいのか?

これについては、日常でいろんな提示の仕方を見ることができます。その典型的なものが、本のタイトルや広告などでみられる表現です。「食べながら痩せるダイエット法」「合格したければ塾には通うな!」「クビでも年収1億円」などなど。

これらはすべて、一般の通念からすると矛盾をはらんだ表現になっています。このような矛盾を見ると、人は「どういうこと?」と不協和な心情を抱き、本の中身を見たりネットで内容を調べたりと、それを解消しようという行動にでるのです。

実際、「食べて痩せるダイエット」というような表現に出くわしてしまうと(結果として商品の購入まで至るかどうかは別にしても)、一体どういうことなのか、その中身が気になる人は多いと思います。

反対に「食べるのを我慢してダイエットしよう!」という表現があったとしたら、「フツーー!!」と思って見向きもしないでしょう(普通すぎて逆に斬新さを感じることはあるかもしれませんが…)。

このように、顧客に違和感を与えるということが、顧客に行動させるための第一歩なのです。そのため、広告等に矛盾を含んだキーワードを提示するという方法は、わりと有効な手法と言えるでしょう。


■【パターン②】購入後に安心感を与える


さて、“認知的不協和”によって多くの人は、自分の「これまでの信念や行為」を事後的に正当化するというケースが多いということは、すでに指摘した通りです。誰しも「自分の選択は間違っていないんだ」と思いたいものです。

そうすると、ポイントになるのは顧客が商品を購入した後です。人は、何か商品を購入した後には「自分が買ったのは良い商品だ」「自分の選択は間違っていなかった」と思いたい、安心したいという気持ちが強く出るものです。

それがわりと値段の高い商品であればなおさらです。高額商品を買ったのにその商品の質が悪かったなんて思いたくないですからね。

あなたにもこんな経験ありませんか?割と値が張る商品を購入した後に、広告を見直したり、CMを見たりしてその商品の良い点を確認しようとした経験が。多くの人は、商品購入後に「自分の選択は間違っていなかった」という安心感を求めて、このような行動に出るのです。

では、そのような顧客がいるということを踏まえて、顧客に対してすべきことは何でしょうか?

例えば、セールスレターを作成する際に、商品を購入した後でも安心感が得られるような記述をそこに含めたり…、もしくは購入後のサポートを充実させたり…、といった手法はかなり有効になります。

そうすることで、顧客は「あぁ、やっぱりこの商品を買ってよかった!」と購入後にも安心感を覚えます。その結果「次もあの人から商品を買おう」と思い、その人はあなたのリピーターになってくれるかもれません。

このように、購入後の顧客に安心感を与えることで固定顧客化を図るというのが二つ目の手法です。


以上のような認知的不協和を利用したマーケティング手法、利用している例は日常のいろんなところで見られると思いますので、意識して見てみると面白いと思いますよ。