ユーティリティトークンとセキュリティトークンの違い
ここでは、暗号資産としてのUtility Token(ユーティリティトークン)とSecurity Token(セキュリティトークン)の違いを解説します。

この記事を読むことで理解できること
◎ユーティリティトークンとは何か?
◎セキュリティトークンとは何か?
◎両者の違いがなぜ大きく議論されることになったのか?

セキュリティトークンについては過去のこちらの記事「セキュリティトークンとは?IPO・ICO・STOの違いとデジタル証券の可能性」でも解説しましたが、今回はそれを「ユーティリティトークンとの比較」という角度から見ていくことになります。

ユーティリティトークンとセキュリティトークン


まず、Utility Token と Security Token を比較すると、次のようにまとめることができます。

◎「Utility Token」=実用型トークン(実利用されるデジタル上の通貨)
◎「Security Token」=証券型トークン(配当のあるデジタル上の株、債券)

以下、それぞれをもう少し詳しく解説します。

ユーティリティトークンとは?


Utility Tokenとは、あるサービスやプラットフォーム上で実利用されるトークンのことです。

例えば「このトークンを持っている人は、その保有量に応じてあの有名アイドルグループの限定グッズと交換したり、限定ライブ参加券と交換できます」というトークンがあったとしたら、それはUtility Tokenと言えます。

この場合、そのトークンの主な保有者はそのアイドルグループのファンが多いでしょう。トークン保有者は、アイドルの限定グッズを手に入れるために(あるいはライブに参加するために)そのトークンを消費することになりますので、これは実利用されているトークンと言えます。

イメージとしては、Utility Tokenはパチンコ店のパチンコ玉やメダルに近いかもしれません。パチンコ玉やメダルの保有者は、それを使用してホール内で遊戯をすることができます。また(当日獲得したパチンコ玉やメダルであれば)それを特定の景品と交換することもできれば、それを現金化することも可能です。このように、特定のサービス内で実利用されるものとしてパチンコ玉やメダルはイメージしやすいのではないかと思います。

そして、パチンコ玉やメダルに所有権がないのと同じように、Utility Tokenに所有権はありません。実利用されることを前提に設計がなされているものには所有権は存在しないのです。

Utility Tokenがパチンコ玉やメダルと明らかに異なる点は、トークンは暗号資産であるためその利用や取引はブロックチェーン上で行われるということです。

セキュリティトークンとは?


一方Security Tokenとは、いわゆる証券(株や債券)をトークン化したものを指します。それ自体が何かに実利用されることはなく、それを保有していればそのトークンの発行元となる企業の業績・利益に応じて配当が得られるというものです。

証券というのは伝統的な投資商品であり、これには明確な所有権があります。したがってUtility tokenとは異なり、このSecurity Tokenには所有権が存在します。先に挙げた例で言えば、パチンコ玉やメダルそのものに所有権はありませんが、そのパチンコ店を統括するアミューズメント会社の株には所有権があるのと同様です。

メダルを何枚持っていようとパチンコ店を所有していることにはなりません。しかし、株をいくらか持っていればその会社(の権利)を一部所有していることになるため、その会社に利益に応じた配当が得られるのです。

当然、このSecurity Tokenも暗号資産なので、ブロックチェーン上で取引や配当がなされることになります。

ユーティリティorセキュリティの議論


ここまで、ユーティリティトークンとセキュリティトークンを比較し、それぞれの特徴を見てきました。

そして実はアメリカの議会では、2018年初頭頃から「このトークンはUtility Tokenに該当するのか、それともSecurity Tokenに該当するのか」という議論が活発に行われるようになりました。

なぜこの議論が活発になったのか?・・・以下ではそれについて解説します。

議論活発化の理由①「Securityであれば…」


まず、もしSecurity Tokenに該当するのであれば、そのトークンは「証券」という位置づけになるため、トークンを発行して資金調達を行う場合には証券法に基づいて(しっかりと法律を遵守した形で)資金調達をしなければなりません。

仮にトークンが証券という扱いになるにも関わらず、証券法を無視した形でトークンを用いて資金調達をしたのであれば、それはアメリカでは明確な法律違反ということになります。事実、2017年にブームとなったICO(Initial Coin Offering)という資金調達方法は、そのほとんどがアメリカの証券法のルールを無視したものでした。

したがって、そのICOに使われていたトークンが証券に該当するのであれば、それは明らかに違法な資金調達であり大きな問題があるということで激しく議論されるようになったのです。

議論活発化の理由②「Utilityであっても…」


ただ困ったことに、実際のところ「これは実用型のUtilityだ!こっちは証券型のSecurityだ!」と明確に区分できるものではありません。先ほどUtility TokenとSecurity Tokenの特徴を述べましたが、トークン発行側と購入側の実態を鑑みると、一つのトークンがUtilityとSecurityの特徴を兼ねていることも少なくはないのです。

Utility TokenかSecurity Tokenか、結局どっちなのかを一概に判断できない…この事実も大きく議題にのぼるに至った要因の一つです。

資金調達をするトークン発行側の実態


例えば、トークンを発行する側が「これは当サービスに実利用されるトークンです」とホワイトペーパーに記述して資金調達をしたとします。これだけ見るとそのトークンはUtility Tokenに該当するような気もします。しかし、プロジェクト内容をよくよく突き詰めてみると、ただの資金集めのためにトークンを発行しただけで現実的な実用性が感じられないトークンも数多くあるのです。

「トークン発行側が「実利用される」と謳っても、資金調達の段階ではそのトークンが本当に実利用されるのかどうかは誰にもわからない」

これが、UtilityかSecurityかを明確に判断できない一つの要因です。

資金提供をするトークン購入側の実態


また、明らかに実用性のあるトークンであっても、そのトークンを購入する側は実利用目的ではなく投資目的で購入している実態も数多く散見されます。社会で実利用されるのであれば、そのトークンはUtility Tokenの側面を持っていると言えます。しかし、その購入者が将来価格が上がった時に大きな利益を得られることを期待して購入しているのであれば、そのトークンは証券と同じでありSecurity Tokenの側面も持っていることになります。

「トークン発行側が実利用を前提に設計をしても、そのトークン購入側は実利用目的ではなく投資・投機目的で購入することがある」

これも、トークンがUtilityかSecurityかを一概に判断できないポイントになります。

このように、「ICOで発行したトークンがUtilityに該当するのか・Securityに該当するのか」どちらなのかによってアメリカでは違法か合法かが分かれる上に、両者は簡単に区分することができない(意見が分かれる)という点から、激しく議論されるに至ったのです。

この流れで誕生したセキュリティトークンオファリング


このような議論の中で、トークンを発行して資金調達をする際にはしっかりと証券法に則り、SEC(米証券取引委員会)の規制に従った形でそれを行おうという流れが出てきました。

これまでのICOのようにブロックチェーンの技術は活用しつつも、既存の法律を遵守した形で資金調達(およびトークンの売買)を実施しようする動きが出てきたのです。

それがいわゆるSTO(Security token offering)という新しい資金調達方法です。このSTOに関してはこちらの動画で詳しく解説しています。


本記事の内容も踏まえて閲覧するとよりその理解が深まると思いますので、ぜひ併せて視聴してみてください。

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