一貫性の原理とは?具体例とビジネス・マーケティングへの応用法を解説
今回は「一貫性の原理」という心理学用語を解説します。

この記事を読むことで理解できること
◎「一貫性の原理とはどのような人間心理なのか」
◎「日常で一貫性の原理があらわれる具体的事例」
◎「ビジネスで一貫性の原理をどのように利用できるのか」

ではまず、一貫性の原理について動画にまとめたのでこちらをご覧下さい。


以下、具体例を交えながら詳細に解説します。

一貫性の原理とは?


“一貫性の原理”とは「過去の自分の発言や行動に対して、その後もある程度一貫した言動をとろうとする人間心理」のことを言います。

一貫した言動をとろうとする習性は、矛盾した言動をとることを嫌う習性ともいえるでしょう。

普通に考えて「宣言しておきながらそれを実行しない」というのは、自分からすると非常に気持ちの悪い感覚に陥るものです。また、他人から見てもそれは当然非難の対象になります。

自分の言動に一貫性を持たせることが社会生活において必要であり、他者からの評価を高めるものでもあるという意識が人間には潜在的に備わっています。だから人は、一貫性を持った行動を妨げるようなものに対しては強い抵抗を感じるのです。

一貫性の原理の具体例


では、具体例をあげてもう少し説明しましょう。

「ヤマオーはオレが倒す!! by天才・桜木!!…どーだオメーラ、これで勝つしかなくなったぜ

あなたは、このセリフを聞いた覚えがありますでしょうか?これは漫画『スラムダンク』の主人公・桜木花道が、バスケットボールの全国大会・山王工業戦で、観客席に向かって放った一言です。

全国大会の2回戦、後半開始から相手チーム・山王工業高校の猛攻撃やフルコートプレスディフェンスを受け、一気に力の差を見せつけられてしまう湘北高校。

前半終了時点では湘北は2点リードしていたものの、後半開始から山王に20点以上の差をつけられてしまいました。

「これが現実…もはやこれまでか…」

湘北側の誰もがそう思い、勝負は決まったと諦めが出始める中、湘北の監督・安西先生はベンチに控えさせていた花道に望みを託し、再び花道をコートに送り出します。

ベンチに控えているメンバーの期待も一身に受け立ち上がった花道はコート横の机の上に上がり、観客席に受かってこう宣言します。

「ヤマオーはオレが倒す!!」

そしてその後、湘北のメンバーに向かって不敵な笑みを浮かべ、こう言い放ちます。

「これで勝つしかなくなったぜ」

スラムダンクの名シーンの一つです。

この描写からもわかるように、「倒す!」と宣言してしまえば倒すしかなくなります。人間には一貫性の原理が備わっているので、一度宣言したからには心理的にはそれを実行せざるをえない・後に引けない状況になるのです。

桜木花道は「これで勝つしかなくなったぜ」という後に引けない状況を自ら作り出すことで絶望的な状況でも勝利にコミットし続けようとしている、これはそんな描写です。

日常でよく見られる一貫性の原理


上の例からもわかる通り、人は何かを公言した際、後の行動に制約が加わることになります。中には過去の発言と矛盾した行動をとりたくないがために、嫌でも一貫した行動をとらざるを得ない時があるのです。

これは日常でもよく見られるパターンです。

以下は大学生の二人、A君とB君の会話です。そして、B君は後にこの会話を非常に後悔することになるのですが、まぁとりあえず読んでみて下さい。


A「俺さぁ、金曜日は授業1限から5限まで授業入っててマジきついんだよね~しかも全部出席とる授業だし…ホント誰か代返してほしいわぁ~」

B「おいおい、それは災難だな。俺は金曜日は授業なし!むしろ毎週金曜日はヒマだから逆に困ってるんだよ」

A「マジかー羨ましいな!でもヒマすぎるのもそれはそれで嫌かも。今週の金曜も何も予定入ってないの?」

B「うん、ヒマでしょうがない、その日バイトもないし。あぁ誰か一緒にカラオケ行ってくれる人いないかな~」

(そこで偶然にもジャイアン級の歌唱力を誇る先輩Cが登場)

C「え、なになに?Bって今週の金曜ヒマなの?ちょうどよかった、俺も空いてるからさ、カラオケ行こうぜ!」

B「(え・・話聞いてたのか。できればC先輩とは行きたくない…でも俺が金曜予定ないことバレてるし、さっきのカラオケ行きたい発言も聞かれてるし…こ、断れない)」

A「よ、よかったな、、B君!ww」

…ということで、とんだ災難にあってしまったB君。おそらくB君は今週の金曜日は耳栓をして外出することになるでしょう。

ここでのポイントは「B君はなぜ、C先輩からの誘いを断れなかったのか」ということですが、それは「金曜日はヒマ」「カラオケに行きたい」という自分の立場をC先輩に対しても明示してしまっていたからですね。

通常、誘いを断る際の黄金の手法として「その日は予定が入ってる」という断り方があります。実際に予定が入っていなくてもそのように断ったという経験は誰しもがもっているでしょう。

しかし上の場合、B君は「金曜日に予定がない」ということを知られてしまっているため、黄金の断り方が使えません。このB君のように一旦立場を明らかにしたり相手の要求を呑んでしまうと、その一貫性を保とうとするために後の行動の選択の自由が奪われてしまうことがよくあるのです。

ビジネスへの応用「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」


そして、この人の行動に制約を加える一貫性の原理を利用したものの一つに「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」というマーケティング手法があります。

これは、一度相手の立場を明らかにさせたり、軽い要求を受け入れてもったりすることで後の選択の自由を奪い、後に大きな要求をすることによってその大きな要求をも受け入れてもらうように仕向ける手法です。

たとえば、以下のような感じです。


A「世界の恵まれない子供たちのために、募金をお願いします!」

B「(募金か~、まぁたまにはいいかな)」と思って1000円を寄付。

(そして三ヶ月後・・・)

A「先日はご協力ありがとうございました。実は東南アジアの学校設立のための資金がいまだに足りない状況です。恐縮ではありますが、東南アジアの子供の教育のために、以前募金の趣旨をご理解いただき、ご協力くださった方々には一層のご協力をお願いしたいのですが…」

こんな感じです・・・。

ここで、更なる寄付をするかどうかはBさんの自由です。ただ、一度募金をすることで「私は世界の恵まれない子供のために貢献します」という立場を明確にしている以上、今になって「まだ資金が足りないと知っていながら今度は募金しない」という態度はとりづらいと思います。

周りから見たら「最初の寄付は何だったの?やっぱり偽善だったの?結局募金することで良い人だと思われたかっただけ?」と、過去の行為を疑われる可能性もあります。

「今のままじゃ東南アジアの子供は恵まれないんだからもちろんまた募金してくれるよね?」的な観念のオーラがBさんの脳を脅迫してくることでしょう。

この場合、一度少額の募金のお願いを受け入れてもらうことで、その後多額の寄付もしてもらいやすくしているわけです。この「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」は段階を踏んだ要求ということになります。

(※ちなみにこの“フット・イン・ザ・ドア”という名前は「一旦ドアの中に足を踏み入れてもらえばあとはこちらのもの」という考えがもとでつけられたものです)


そしてこの“フット・イン・ザ・ドア・テクニック”の手法・・・前回の記事で取り上げた“返報性の原理”を利用した例と真逆の性質があるのですが、そのことには気付きましたでしょうか?


比較してまとめておくと、

■【フット・イン・ザ・ドア】
「一貫性の原理」を利用したマーケティング手法
「小さな要求→大きな要求」の順で提示をする

■【ドア・イン・ザ・フェイス】
「返報性の原理」を利用したマーケティング手法
「大きな要求→小さな要求」の順で提示をする

ということになります。

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