進撃の巨人の世界観の考察【あらすじから考える現代社会の諸問題】
「調査兵団に入ってから驚かされてばかりだ。ハンジさんだけじゃない。変わり者だらけ…これじゃまるで、変人の巣窟。変革を求める人間の集団…それこそが調査兵団なんだ」

(『進撃の巨人』第20話より引用)

これは漫画『進撃の巨人』の第20話(単行本5巻)で、主人公のエレン・イェーガーが調査兵団に入団した当初に発したセリフです。

さて、なぜここで『進撃の巨人』を取り上げたのか?

それは、上記に挙げたセリフを含む『進撃の巨人』の世界観に、現代社会と酷似する点が多くあり、今の時代を考える上で非常に重要だと感じたからです。

以下では、この『進撃の巨人』の世界観について“私独自の視点”からその重要性を考察していきます。

まずは『進撃の巨人』を知らない人のために、序盤のストーリーと主人公エレン・イェーガーの人物像を簡単にまとめておきましょう。


進撃の巨人のストーリー(あらすじ)



今から100年ほど前、突如出現した“ある生物”によって、人類は絶滅の危機にさらされることになりました。その生物とは、人間を喰らうという生態を持つ“巨人”

大半の人間がいとも簡単に巨人に捕食されてしまう中で、かろうじて生き残った人間がいました。そして生き残った人間は人類の滅亡を危惧し、何とかして今後巨人との接触を断とうとします。

そこで人間がとった行動は、高さ50メートルの壁を作りその円形に囲まれた壁の内側で生活するということでした。人間を捕食する巨人にはその高さの壁を越えることはできないため、その円形の壁の内側で生活していれば巨人と遭遇することもなく、安息な生活を送ることができる(と当時はされていた)のです。

それから100年間、一般市民は巨人と遭遇することもなく壁の内側で安穏とした平和な日々を送っていたのでした。

しかし、壁の内側で安息な生活だけを送っていくことに異を唱える人物も出てきます。主人公のエレン・イェーガーもその一人です。単行本1巻で、壁の中で生活していくことに対して、エレンは次のような言葉を発しています。

「一生壁の中から出られなくても……メシ食って寝てりゃ生きていけるよ…でも…それじゃ…まるで家畜じゃないか…」

(『進撃の巨人』第1話より引用)

壁の外のずっと遠くの世界には、今生きる人間が見たこともない「炎の水」「氷の大地」「砂の雪原」が広がっているといいます。エレンの心の内側には、外の世界を探検し、未だ見たことのない上記の光景を目にしたいという探究心があるのです。

「人間は皆生まれた時から自由だ。炎の水でも氷の大地でも砂の雪原でもなんでもいい。それを見た者はこの世界で一番自由を手に入れた者だ」(単行本4巻)

そのような志のもと、エレンは壁の外側を探索する「調査兵団」に入ることを希望します。

しかし、そのような意見は周囲の多くの人には受け入れられません。当時の一般市民の頭の中には次のような思考の枠組みが既に出来上がっています。

●壁の内側で生活していく(安息を守る)=常識・常人
●壁の外側を知ろうとする(危険を冒す)=非常識・変人

そのような思考を持つ人々からは、エレンのような(下の)考えを持つ者は「異端者」というレッテルを貼られるだけなのです。当然エレンの母親も、エレンが調査兵団になることには反対します。

そんな中、突如現れた想定外の“超大型巨人”によって、壁の一部が壊され穴が開いてしまいます。そしてその穴から内側に侵入してきた巨人たちによって、人類は次々に捕食されてしまうのです。

100年ぶりに巨人に襲われることになった人類。そこで母親までもが食べられてしまう光景を目撃してしまったエレンは、先程の“探究心”とは別に、「巨人を一匹残らず駆逐してやる!」という“復讐心”も兼ね備え、調査兵団に入ることを固く決意するのです。


さて、以上が序盤のストーリーですが、私はここに出てくる「壁」の存在を、現代社会における「個人」「企業」「国家」それぞれに存在するものの象徴として捉えたいと思います。

まずは簡潔にまとめたこちらの動画をご覧ください。


以下、これについて詳細に解説していきます。


進撃の巨人の考察①(個人編)【壁の内側にある日常】



私たちは「人間は常に死と隣り合わせに生きている」ということをついつい忘れがちになります。平穏な生活が長く続けば続くほど、そのような意識は忘却の彼方へ葬られてしまいがちです。

例えば、あの出来事の状況を今もうすでに忘れ去ってしまっているという人も多いのではないでしょうか?

東日本大震災のあの悲惨な状況を…

2011年3月11日、大震災は日本全体を恐怖の渦に巻き込みました。

・「死はふとした瞬間に訪れる」
・「人間はいつ死んでもおかしくない」
・「自分たちは実は常に死と隣り合わせで生きている」

このことを日本の多くの人が痛感しました。

この震災は「大きな揺れ」という破壊を伴う恐怖を私たちに与え、それによって私達日本国民は少なからず「死」というものを意識したのです。

しかし、震災から3年4ヶ月が経過した今では、それとは全く違った、ある意味ではそれよりも大きな恐怖がこの世に潜在しているがします。それは私たちが「死」というものを意識することすらできないほどに恐ろしい「風化」という静かなる恐怖です。

生命あるものには、「死」は刻一刻と近づいてきています。日常化によって、その「死」の存在を忘れ、本当に大事なものを見失ったままただ何となく生きて死んでいくのだとしたら、その日常化は死以上の脅威といえます。

そしてその平穏な日常をもたらし「重要なものを風化させること」を象徴するのが、『進撃の巨人』でいう「壁」の存在でしょう。

高さ50メートルの城壁を築いてから100年間、人々は巨人に遭遇することもなく安息な生活を送っていました。その壁によって安息生活圏を確保したことで、人類はまるで自分達は巨人とは無縁の存在であるかのごとく錯覚してしまうのです。

しかし、不慮の事態は突然やってきます。突如現れた“超大型巨人”によって壁が壊され、安全とされた生活圏内に次々と巨人が侵入し、人類は多くの人の死を目の当たりにすることになります。

■『進撃の巨人』
「巨人との遭遇」という事態によって、人類は滅亡の危機にさらされる。しかしその危機意識も「壁」の内側で安息の生活を長く送っていくことでどんどん風化していくことになる。

■『現代社会』
「震災との遭遇」という事態によって、多くの人が死に対する恐怖を実感する。しかしその恐怖も「日常」の中で平穏な生活を長く送っていくことでどんどん風化していくことになる。

これはよく聞く話ですが、人が死ぬ間際に発する言葉の多くは「人生の中であの事ができてよかった」という満足ではなく「人生の中であれをやっておけばよかった」という後悔です。

不測の事態が起きた後に後悔しないためにも、自分の日常を今一度考えてみるといいかもしれません。「このままでいいのだろうか」ということを。「忘却の彼方にやり残していた大事な事はないか」ということを。

大事なものを風化させてしまう可能性のある自分の心の中の「壁」を一度ぶち壊してみてください。

「日常から離れる」「当たり前を疑う」「既定の枠組みを壊す」「生を見直す」

そういった行為の先に、忘却の彼方へ葬られていた、本当に大事なものが見えてくるのではないでしょうか。

進撃の巨人の考察②(企業編)【壁の内側にある安定】



「壁の内側で安全に生活していくのが常識」という考えに対し、主人公のエレンは「でも…それじゃ…まるで家畜じゃないか…」と言い放ちます。

そう…この「家畜」というのは企業でいうところの「社畜」に該当します。『進撃の巨人』でいう「壁の内側で生活していくこと」は、現代の社会で「企業の中で雇われて生活していくこと」と同値です。

企業における社員の多くは、残りの自分の人生の半分以上の時間を、その企業にささげます。そしてその時間の中で労働を奉仕することで、一定の給与をもらって生計を立てています。

このいわゆる企業就職という行為は、一昔前までは「安定」という言葉とセットで用いられており、プラスであるとされていました。一流といわれる企業であればあるほど、その傾向は顕著でした。

しかし、今は時代が違います。一流と言われていた企業でも業績の悪化が目立ち、社員の給与削減や多くのリストラを余儀なくされるところもあります。(もはや企業名を挙げるまでもないでしょう)

そこには「安定」などという言葉は皆無であり、もはやそんな保証は消失しています。かつて大企業と言われていた会社でも、その内情を知らない限りは今の時代いつ倒産してもおかしくないのです。

『進撃の巨人』に出てくるエレンの友人で、知性豊富で判断力に長けているアルミン・アルレルトは「壁」について次のような見解を述べています。

「確かに、この壁の中は未来永劫安全だと信じきってる人はどうかと思うよ。100年壁が壊されなかったからといって今日壊されない保証なんかどこにもないのに…」

企業についても同じことが言えます。100年運営がスムーズにいっていたとしても、今日その歯車が狂わないという保証などないのです。

歯車が狂った時も個人で生き抜いていけるだけのスキルを身に着けておくこと…これが現代社会における本当の安定につながるでしょう。

また、『進撃の巨人』における主人公のエレンは徹底して「自由」を追求します。「壁の外の世界を探検し、未知の領域に足を踏み入れた者が、この世界で一番の自由を手に入れた者である」と考え、自由を求めて壁の外に出ようとします。

現代社会においても「自由」ということを追求した場合、人生の残りの時間の多くを企業の中で費やすというのは自由とは言い難いです。

それを自由と言う人がいるとすれば、多くの場合、今の自分の立場を正当化するために「私は自由だ」「自らの意思で時間を使っている」と必死に言い聞かせているだけです。「時間的自由」を追求した場合、企業に勤めている限りはその実現は難しいのではないでしょうか。

■『進撃の巨人』
壁の内側で一定の職務を遂行していれば「安全」な生活を送れると言われているが、実際には壁はいつ崩壊してもおかしくはない。壁が崩壊しても、自力で巨人に立ち向かっていけるだけのスキルを自ら身に着けることが本当の安全につながる。
また、壁の中で生涯を終えるというのは「自由」とは言い難い。自らの意思で外の世界を探検できることが本当の自由である。

■『現代社会』
企業の中で一定の職務を遂行していれば「安定」な生活を送れると言われているが、今の時代企業はいつ倒産してもおかしくはない。企業が潰れても、自力で生き抜いていけるだけのビジネススキルを個人が身に着けることが本当の安定につながる。
また、企業の中で多くの時間を費やすのは「自由」とは言い難い。自らの意思で外の世界にも時間を使えることが本当の自由である。

現代社会で「経済的自由」と「時間的自由」を獲得するためには、寄りかかることで安全といわれる「壁」…企業就職という壁を壊し、自力で生き抜く力を身に着ける必要があるのではないでしょうか。

進撃の巨人の考察③(国家編)【壁の内側にある平和】



『進撃の巨人』では、壁の外を出ることで巨人と遭遇することになります。壁の外を偵察する調査兵団は、自分たちを食べようとする巨人に対抗するため、必要に応じて巨人たちと死闘を交えることになります。いわば壁の外では「戦争」が行われるのです。

壁の内側は安全な(とされる)生活の場、壁の外側は危険な戦地。この壁の存在は、言ってみれば「戦争するかしないかの境界線」、現代社会で言えば、平和主義を規定した「日本国憲法第9条」のようなものです。

国は安全保障関連法案を成立させ、集団的自衛権の行使を可能にしました。いわば憲法第9条という名の壁を少しだけ削り、その層を薄くしたのです。

安倍首相は“抑止力”という言葉を強調し、「これによって日本が戦争をするようなことは決してありえない」という言葉も残していましたが、抑止力が効くかどうかはもはや相手国次第です。

つまり戦争になるかならないかは、相手国の出方次第であり、究極こちらでコントロールできるものではありません。少なくとも、今回の閣議決定を受けて今後戦争を余儀なくされる可能性は今までよりは高くなった、ということは理論上言えるでしょう。

この認識を持っておくことは非常に重要だと思います。

『進撃の巨人』ではじめて巨人に遭遇し、仲間が食い殺される光景を目の当たりにしたアルミン・アルレルトは、次のような心境を心の中で語っています。

「地獄だ…イヤ…地獄になったんじゃない。今まで勘違いしていただけだ。最初からこの世界は地獄だ。強い者が弱い者を食らう、親切なくらい分かりやすい世界…」(単行本2巻)

また、エレンの幼なじみで、過去に強盗に殺されそうになった経験をもつミカサ・アッカーマンは、エレンと自分が殺されてしまうことを意識した瞬間、次のことを思い起こします。

「その時思い出した。私が今体験している非常な出来事は今までに何度も見てきたものだ。そうだ…この世界は残酷なんだ。自分が今この残酷な世界で生きていることを実感した瞬間、体の震えが止まった。その時から私は自分を完璧に支配できた。何でもできると思った」(単行本2巻)

その後、ミカサは巨人との戦いで屈しそうになった際も、この時のことを思い出し「何としても生きる」と奮起することになるのです。

現代社会においても「戦争なんて起こるわけがない」と壁の中だけに目を向けて平和ボケしている人は今の国際情勢についていけないのではないでしょうか。

今後は戦争は起こる可能性も否定できないという認識をしっかり持つことで、国家を守るための冷静な判断もできるようになると思います。

■『進撃の巨人』
壁の中で生活している限り、自分が安全な場にいるという勘違いが払拭されることはない。実際に壁の外を知ることで、この世は残酷な弱肉強食の世界であることに気付くことができる。それに気付いた瞬間、自分を完璧に支配し、冷静な判断を伴った行動ができるようになる。

■『現代社会』
日本国憲法9条を堅持している限り、人々の中にある平和ボケは払拭されることはない。今回の憲法解釈変更をよく知ることで、今後戦争が起こる可能性がないわけではないという認識を明確に持つことができる。その認識が持てた時、今の国際社会の中での日本を冷静に考えていくことができる。

おそらく、誰もが戦争をすることには反対でしょう。ただ、その上で現実を冷静に見つめ、めまぐるしく変化する国際情勢の現状を正しく捉えることが、今の国際社会を生きていく上で必要な第一歩であるということは間違いないと思います。

戦争について、ダウンタウンの松本人志さんはかつてのラジオ番組で「戦後、戦後、って言ってるけど、実は今は戦前なのかもしれない」という言葉を残していますが、これはその通りかもしれないですね。

進撃の巨人の世界観考察のまとめ


これまで『進撃の巨人』における「壁」の存在を「個人・企業・国家」の単位でそれぞれ考えてきました。

もちろん、こういった考察が価値をもつのは、それが正解かどうか判明した時ではなく、それによって他者にプラスの影響を与えることができた時です。

ここまで読んで、あなたに何か学ぶものがあれば幸いです。

そして何より、この6500字以上に及ぶ膨大な情報量の記事を最後まで読んでくれたあなたは、冒頭で掲げた調査兵団に入団できるほどの変人かもしれません。

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