そもそも男と女の脳の構造には違いがあるため、心理にも発言にも男女では違いが出てきます。「男女はすれ違って当然」という認識を持ち、お互い寛容になることが相互に分かり合う第一歩ということでした。
今回は、そのリベンジポルノ等の問題の直接的な原因だと考えられる「失恋・別れ話」の際の脳について考えていきます。
◎「好き・嫌いの感情の源泉をビジネスにどのように応用できるのか?」
ぜひ最後まで目を通してほしいと思います。
目次
「好き嫌い」の感情の源
人間の脳を大きく三つの部位に分けるとすると「脳幹」「大脳」「小脳」に分けることができます。このうち、人間の脳の80%を占めると言われる大脳を、さらに二つに分けると「大脳辺縁系」と「大脳新皮質」に分けることができます。
この「大脳辺縁系」と「大脳新皮質」もつ機能をそれぞれ思い切って単純化すると、
・「大脳新皮質」は理性的な思考担当
このように単純化することができます。つまり、何か物をほしいと思った場合には、
・本当に必要だと判断する(needs)時は「大脳新皮質」が機能している
ということになります(※もちろん、この二つは相互作用をしているため、実際は完全に機能を分断できるものではありません。ここでは便宜上、とりあえずの理解としておさえておいてください)
そして感情担当の大脳辺縁系には「扁桃体」(へんとうたい)という部分があります。
図のように扁桃体はアーモンドのような形状をしているのですが、人が好き嫌いを決定する際はこの部分が働いていると言われています。
扁桃体は大脳辺縁系の一部ですので、理性ではなく感情を司ります。ここの部分で瞬時に「好き・嫌い」という感情が芽生えるのです。
これは瞬間的かつ無意識の決定であり、この時点では、なぜ好きなのか・なぜ嫌いなのか、という明確な理由はありません。そのような理由は、理性をつかさどる「大脳新皮質」によって事後的に付け加えられることになるのです。
つまり、以上のようなプロセスをまとめると、次のようになります。
↓
「なぜだろう?」
↓
「理由は○○だ!」(大脳新皮質)
人はまず、扁桃体によって無意識に「好き嫌い」の感情を決定し、その後、大脳新皮質によって冷静な判断(理由づけ)を下すのです。
「人は、感情で物事を決定し、後から理論でそれを正当化する」
これは恋愛の場合に限らず、人が商品を購入するときなど様々な場面で見られます。人間のこのような性質は、脳科学的に明らかなのです。マーケティングに脳科学の知識が活きてくるのもそのためです。
そして、恋人に「私のどこが好きなの?」と聞かれても明確に答えられないことがあると思いますが、それは上記の理由から当然です。好きになった時点では、そこに合理的な理由は存在しないのです。その理由を明確に答えられるとすれば、それは相手を納得させるための後付けの理由ということになります。
したがって、以上のことから「自分を好きになってくれていた恋人が、急に自分のことを嫌いになった」という事態に「なぜ?」という明確な理由を求めても、ほとんどの場合は納得のいく答えは返ってこないことがわかるでしょう。究極的には、そこに理由なんてないのです。
男女が別れ話をする際、一方が納得がいかなければ、相手に対して「どうして嫌いになったの?」と聞くことがあると思います。しかし、それに対して返ってくる回答のほとんどは正確な理由ではなく、今まで付き合ってきた中の出来事をもとに、相手が頑張って考え出した理由なのです。
相手を嫌いになった理由を必死に正当化できるように、あるいは相手をできるだけ傷つけないように、しっかりと言葉を選んで別れを告げるという人もいるでしょう。
よって、「嫌いになった部分を直せばまた相手は自分に振り向いてくれる」と考えるのも間違いです。嫌いになった理由は後から付け加えられたものであり、その理由をクリアしたからといって、嫌いという相手の感情が解消されるものでもありません。
多くの場合、相手が口に出したその理由をクリアしたとしても、相手はもうその人のことを好きになることはないです。
「あなたに会ってたまたま好きになり、付き合う中でたまたま嫌いになった」
人の恋愛にはこれがつきものなのかもしれません。恋愛はそういうものである、あるいはそういうこともある、くらいの認識を持つことも重要なのではないでしょうか。
このことを理解せずして、理由のないものにまで理由を求めてしまうと、納得のいかない理由で自分を嫌う相手のことが理不尽に感じられ、相手に対して恨みや憎しみをもってしまう可能性があります。
最近問題になっているリベンジポルノやストーカー等、男女の交際関係のもつれから発展する事件は、このような相手の理不尽さに対する憎しみに起因しているように思います。
だとすれば、人の好悪の感情には合理的な理由などない、という一定の知識を持ち、あきらめも重要だという認識を持てるようになることが、こういった問題を起こさないために最も重要となるでしょう。脳科学的に恋愛を考えた際、自分の努力ではどうにもならないこともあるのです。
失恋から立ち直るまでの男女の脳
失恋をした際、男性と女性ではどのような違いがあるのでしょうか?
これは非常によく聞くことですが、
◎女性は比較的早く立ち直り、次の恋愛に移れる
と言われています。また、新しく恋人ができた際、過去の恋人についての扱いとして、
◎女性は過去の恋人を忘れ常に今の恋人のことを考える(上書き保存)
というのもよく耳にすると思います。
では、なぜ失恋や新たな出会いの際にも男女間で違いが生じるのでしょうか?
これに関する理由は明らかになっていません。しかし、人間の脳にはこれまでの長い歴史の中で育まれてきた文化も反映されているということをその理由とする説があります。
たとえば、女性であれば子供を産まなくてはいけません。そして長い歴史の中では、その子どもを育てるのも主に女性の役割でした。
そのような社会において、子供を産む体力や子供を育てる時間を考えると、女性はパートナーを見つけるのにゆっくりしている余裕はないのです。失恋を経験してもクヨクヨしている時間的余裕はなく、すぐに次の相手を見つけなければいけません。
女性の脳はそのような社会の在り方を今も受け継いできているため、女性は失恋からの立ち直りが早く「上書き保存」型だと言われています。
逆に男性の場合は、女性のように時間的余裕がないという事情はありません。また、一夫多妻制という昔の文化の在り方を一部脳が受け継いでいるということを考えると、男性が「名前を付けて保存する」タイプというのも納得ができる気はします。
これはあくまで一つの説にすぎませんが、どうやら人間の脳というのは「生物学的性質」だけではなく、上記のような「文化的性質」をも受け継いで形成されているということは言えそうです。
恋愛脳科学のまとめ
前回と今回の記事で見てきた通り、男性の脳と女性の脳はそもそも構造から異なります。また、「好き・嫌い」という感情に本来的な理由など存在しません。
まずはこの知識を持っておくことが非常に重要です。
このような知識を持っておけば、相手の言動の不可解に感じていた部分も「そういうこともある」と寛大に受け入れることができると思います。そして不可解な部分に執拗に理由を求めることが無意味な行為だということもわかり、相手に憎しみを覚えるということも少なくなるでしょう。
最近の男女の交際関係のもつれから発展する事件においては、当事者である男女ともに、こういった脳科学的な知識はまずもちあわせていないはずです。知識がなければ当然、扱い方もわからず失敗してしまいます。
漫画『ワンピース』に出てくるDr.クレハは次のような言葉を発しています。
(ワンピース単行本16巻より引用)
「いいかい 優しいだけじゃ人は救えないんだ!!!人の命を救いたきゃそれなりの知識と医術を身につけな!!!」
医学の世界においては、医学の専門知識と高度な技術は必須です。それらをもちあわせていなければいくら頑張っても成果は得られません。下手な手術で患者を死なせてしまう可能性だってあるでしょう。
おそらく、男女間の恋愛においても同じことがいえます。
お互いについての(脳科学的)知識をもって接することがないから、下手な振る舞いで相手を不快にさせ、憎しみを持ち、相手を殺傷するという事件にまで発展してしまうのです。
昨今話題となっているリベンジポルノやストーカー殺人等の問題を根本的に解決するには、このような脳科学的な教育も必要なのではないでしょうか。
「好き嫌い」の感情をビジネスに応用
それでは、最後に「好き・嫌い」の感情の発生過程をビジネスに応用するための考え方を紹介します。
先ほど述べたように「人は感情で物事を決定し、後から理論でそれを正当化する」という傾向があります。これは商品を購入する際にも同じです。人は「感情によってあの商品が欲しいと感じ、それを購入した後に、その購買行動を事後的に正当化する」という傾向があるのです。
したがって、商品を販売する側の留意点としては、はじめに顧客の感情の部分に訴えかけることが重要になります。
はじめから客観的に説明できる「商品の性能」をいくら説明したところで、顧客の多くは商品に魅力を感じてくれません。「好き・嫌い」という感情は主観によるものなので、商品のスペック紹介などの客観的な説明(合理的な説得)をしても、あまり人の感情は動かないのです。
では、感情の部分に訴えかけるためには何が必要なのか…?そして商品の素晴らしい性能はどのタイミングで伝えればいいのか…?
これについては以下の動画で詳しくまとめておきましたのでぜひ最後まで視聴して下さい。Appleがなぜ成功したのかというのも、この動画で話しているのポイントが最大の理由になっています。
では、どうぞ。
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