ドル一強の通貨覇権システムの問題点とステーブルコインの可能性
本記事のテーマは「仮想通貨市場のステーブルコインの意義」です。

まず大前提として、私は仮想通貨市場のステーブルコインを “現在の米ドルに取って代わる存在になり得る新時代の基軸通貨” と位置付けています。今の資本主義における基軸通貨はドルですが、次世代のポスト資本主義における基軸通貨はステーブルコインになるという個人的な見立てです。

なぜ、そのように考えるのか?…それは、現在のドルを基軸通貨とする経済システム自体が非常に深刻な問題を抱えており、その問題を解決する唯一の糸口になりうるのがブロックチェーン上のステーブルコインと言えるからです。

そのことを踏まえ、本記事では以下を中心に詳しく解説していきます。

この記事を読むことで理解できること

◎米ドルを基軸通貨とする現在の経済システムには具体的にどんな問題点があるのか?
◎なぜブロックチェーン上のステーブルコインがその問題解決の糸口になり得るのか?


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現在のアメリカ・ドルの世界的位置付け


次の図は、世界各国の中央銀行準備金(各国の中央銀行が保有する主な外貨)の保有比率を示したものです。データの期間は2015年〜2025年です。

(引用:https://coferdata.com/


このデータを見ると、過去十年(実際は数十年)にわたって世界の中央銀行準備金の大半はアメリカ・ドルが占めてきたことがわかります。2015年から2025年までの推移を見るとドルの占有率は徐々に低下傾向にありますが、それでもまだ全体の60%弱を占めています。

なお、二番目に多いのはユーロで全体の約20%、日本円とイギリス・ポンドに至っては全体のわずか5%程度です。長年にわたるドルのシェアの圧倒性はこのデータから一目瞭然です。


では、なぜ世界各国の中央銀行はこれほどまでに多くのドルを準備金として保有しているのでしょうか…?

それは、現在のドルが様々な国の貿易や金融取引に使用される基軸通貨だからです。つまり、多くの国は「国際貿易や外国為替市場の取引に必要だから」という理由でドルを外貨準備金として保有しています。各国にとってドルは経済活動を行うための必需品ということです。

これは逆に言うと、外貨準備金として十分なドルを保有していない国は「国際貿易や外国為替取引に必要なものを備えていない」ということになります。そのため、ドルを保有していない国の経済信用度は低くなりがちです。特に自国通貨が安定していない新興国ほどその傾向は顕著であり、そのような国が自国の経済的信用を高め、自国通貨の安定を図るためにはドルの保有は必要不可欠なのです。

以上のことから、現在のドルは次の①②の役割を持っていると言えます。

① 世界の基軸通貨として国際貿易を円滑にする
② それを保有する他の国(の通貨)の経済的信用を示す

そのため、世界の中央銀行準備金はその大半をドルが占めているのです。

 なお、もともとはアメリカのドルではなくイギリスのポンドが世界の基軸通貨でした。「そこからどのような経緯で米ドルが基軸通貨としての地位を確立したのか」という歴史的な解説は本記事では割愛します。

現在の米ドルの問題点①


すでに述べたように、多くの国は外貨準備金としてドルを保有しています。そしてそれは、自国通貨の信用度が低い新興国ほど大きな意味を持ちます。

繰り返しになりますが、新興国がドルを保有することはその国の経済的信用を高め、自国通貨の安定を図るのに非常に有効な手段です。ドルの保有によって為替市場への介入が可能となり、対外取引の信頼性が向上し、経済危機に対する備えが強化されるのです。

これは「ドルが新興国を支えている」という点で一見すると良いことに思われるかもしれません。しかし、この役割を持つドルにはある問題点が内在しています。

それはドルを保有することで自国の経済的信用を維持している新興国を、アメリカは生かすことも殺すこともできてしまうという点です。

ドルの支配力が強い今の経済システムでは、アメリカは特定の新興国を経済的に支援することもできれば、逆に制裁によって圧力をかけることも可能です。いわば、アメリカは特定の新興国の生殺与奪の権を握ってしまっているということです。

そして事実、そのような新興国に対してアメリカが経済制裁を敢行した事例は存在します。

例えば2017年、アメリカはベネズエラに対して石油取引の制限や金融機関への制裁を行なったことで、ベネズエラはドルを保有できなくなってしまいました。その結果ベネズエラの通貨の価値は暴落し、ハイパーインフレーションを引き起こして国民の生活は極度に困窮することになったのです。

他国に対してアメリカがこのような生殺与奪の権を持てることは、ドルがすでに述べた①②の役割を持っていることに起因します。世界の基軸通貨、かつ他国の経済的信用を裏付ける通貨が中央集権的に管理されているからこそ、その中央に位置するアメリカはドルに頼る他国を生かすことも殺すこともできてしまうのです。

このような不均衡なパワーバランス自体が国際的に不平等と言えますし、その支配的地位を利用して経済制裁を加えることは国家間の政治的な摩擦を生む可能性も孕んでいます。したがって、これは社会的にも大きな問題と言えます。

現在の米ドルの問題点②


また、現在のドルには発行上限はありません。

もともと1971年のニクソン・ショック以前は、ドルの発行量には上限がありました。当時はドルの価値はアメリカが保有する金(ゴールド)の量に裏付けられており、保有する金の価値を超える数量のドルは発行できなかったのです。いわゆる「金本位制」というやつです。

しかし、ニクソン・ショックによってドルは金との結びつきのない不換紙幣となりました。これにより、アメリカは金の保有量の制約を受けることなくドルを発行できるようになったのです。

では、金との結びつきがなくなったドルは、何を担保に発行されるようになったのか?

それは「アメリカの国債」です。国債は国の経済力を上げるためにその国自身が負う“借金”のことなので、ニクソン・ショック以降のアメリカは「国の経済の成長見込み」を担保としてドルを発行するようになったと言えます(ちなみにこれは今の日本における円も同じです)

したがって現在は、アメリカが新たなドルを発行するたびにそのアメリカの財政赤字は拡大することになります。そしてこれが原因となって、今のアメリカは巨額の借金を抱えた世界最大の債務国になっているのです。

そしてこのアメリカの債務は年々拡大するばかりで、一向に解消される気配はありません。債務を拡大し続けているにも関わらず今のところアメリカ経済が破綻していないのは、アメリカのドルが基軸通貨のため、他国がそのドルやアメリカ国債を買ってくれるからです。

しかし、このまま財政赤字があまりにも拡大しすぎると、いずれ他国がドルの信頼性を疑い始めドル資産を減らす動きが強まる時が来るかもしれません。またこのままドルを発行し過ぎると、ドルそのものの価値が下がりインフレが加速するリスクも十分考えられます。

何より世界最大の債務を抱えており、現在進行形で財政赤字を拡大し続けている借金大国の通貨が世界の基軸通貨になっているということ自体が経済システム上危ういのです。

このように、経済システム自体いつ崩壊してもおかしくないというリスクを潜在的に孕んでいる点も、現在のドルの大きな問題点と言えるのです。

アメリカ一強の通貨覇権システムからの脱却


ここまで述べたように、現在のドルを基軸通貨とする経済システムは非常に深刻なリスクを抱えています。

アメリカは現在のドルの支配力を利用して他国に対して経済的制裁を課すことが可能ですが、このような権力の一極集中に伴う国際的な不平等は既存の経済システムの中で解決することはできません。これを解決するためには、今のドルを基軸通貨とするアメリカ一強の通貨覇権システムから脱却するしか方法はないと言えます。

また、年々財政赤字を拡大し続けているアメリカ中心の現経済システムは、その持続可能性が懸念されています。このままアメリカ政府の債務が増加し続けると、いずれドルに対する信頼が揺らぎドル離れが進行する時がくるかもしれません。また、今のままドルを発行し続けることにも世界中でインフレが発生する危険性が孕んでいると言えます。このような高額な国債・インフレリスクとそれに伴うグローバル経済の不安定化の問題は、既存の経済システム自体が引き起こしたものであり、これらを解決するには既存のものとは全く別の持続可能な新しい国際経済システムの構築が必要になります。

いずれにせよ、現在の問題を解決するには既存の経済システムとは別の新しい国際経済システムが不可欠なのです。

そしてその解決の糸口になり得るのが、既存の「中央集権的な通貨システム」とは全く別の、新しい「非中央集権的な(分散型)通貨システム」です。ブロックチェーン技術を基盤にした経済システムは特定の国や中央銀行の影響を受けにくく、より分散化された国際通貨システムを構築できる可能性があるからです。



つまり、ブロックチェーン技術を基盤にしたより分散化された金融システムの中のステーブルコインが、今のドルに取って代わる新時代の基軸通貨になりうるということです。

そして現に、上図の左の資産よりも右の資産を保有しようという流れは徐々に進行してきています。

物理的なゴールドではなくデジタルゴールドとしてのビットコインを資産として保有する流れは各国で起き始めていますし、既存の証券をトークン化してブロックチェーン上に移行しようという流れも進んできています。つまり、右側の市場には現在進行形で少しずつお金が流れてきており、非中央集権的(分散型)システムは着実に大きくなってきているのです。

したがってこのまま徐々に新しい経済システムが構築されていくと、その過程で今のドルに取って代わる新しい基軸通貨が現れることも決して非現実的なことではありません。非中央集権型のステーブルコインを軸にした、より公平で持続可能な国際経済システムがブロックチェーン上に展開される可能性も十分に考えられるのです。

もちろん、これは未来のことなので実際にその通りになるかどうかは誰にもわかりませんし、仮にそれが実現するとしてもどれくらい時間を要するのかもわかりません。

ただ一つ確実に言えるのは、今のアメリカ一強の通貨覇権システムにはその持続可能性も含めて大きな欠陥があり、既存の経済システムのままその問題を根本から解決することはできないということです。

本記事で解説してきた現在のドルの特徴と問題点、そしてその問題点を解決し得る新しい経済システムの可能性はぜひ理解しておいていただければと思います。

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